“アイヌ口承文芸の中の北見湧別” 第4回湧別町民大学

参加者の質問を聞く講師の中川さん

 令和8年10月16日(金曜日)、第50回湧別町民大学の4回目の講座が文化センターTOMで開催されました。
 今回は、長年にわたりアイヌ語やアイヌ文化の研究に取り組み、フィールドワークを通じてアイヌの口承文芸や世界観を研究し、その成果を広く社会へ発信してきた、千葉大学名誉教授の中川裕さんによる「アイヌ口承文芸の中の北見湧別」と題した講演が行われました。
 アイヌでは物語は口伝えによって語り継がれてきました。今回の講演では、湧別川流域を指す「北見湧別」に実在したと言い伝えられている英傑「イクレスイェ」の伝承と、中川さんの考察についてお話がありました。
 遠軽町にある願望岩を砦とし、湧別川中流の首領であったなどと語られる「イクレスイェ」は、勇気があって狩りの名手、そして何より足が速く、一日で北海道中を歩くことができたといいます。そんな彼にまつわる伝承は数多く残されており、中川さんはアイヌ文化についての解説も交えながら、いくつかの物語を紹介しました。
 一方で、「イクレスイェは湧別ではなく石狩にいた」という伝承もありますが、中川さんは「上湧別町史に書かれているアイヌに関する記述と、伝承における位置関係は一致するため、やはり湧別と深い結びつきがあると考えられるのではないか」と語りました。
 また、「本当のところはわかりませんが、イクレスイェを含む6人兄弟が北海道各地の首領となったという伝承から、兄弟それぞれの功績が、いつしか長男のイクレスイェの功績としてまとめて語り継がれたのかも知れない」といった考察も披露されました。こうした伝承の背景に思いを馳せ、想像を膨らませることができることも、口承文芸であるアイヌ文化の大きな魅力の一つかもしれません。
 質疑応答では、参加者から「自宅の敷地にかつてアイヌの住居であるチセが建てられており、その様子が映っている写真が残っている」と感慨深そうに語られる一幕もあり、地域とアイヌ文化との深い結びつきを再確認する有意義な講演会となりました。

 今年度は第50回の節目を記念して、湧別町民の受講料が無料となっています。
 最終回の第5回は10月28日(水曜日)に、東京大学大学院農学生命科学研究科特認教授の鈴木宣弘さんによる「『世界で最初に飢えるのは日本』って本当ですか?」と題した講演が行われます。