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ゆうべつ@サッポロ/つらら(上)ラーメン
今回取り上げるのは、「つらら」のラーメンです。きっかけは6月の「北大祭」に湧別高校の生徒が出した特産品販売の模擬店。生徒たちがメインで推していたのが、袋麺の「つらら」のラーメンでした。なぜメインに? 生徒会長の松原光心朗さんの答えは明快でした。「湧別町を代表する特産品なので」
模擬店では、<「マツコの知らない世界」で取り上げられました!!>と紹介。あの有名なテレビ番組で取り上げられ、そして評判になった。なるほど。番組は見ていなかったけれど、札幌の特産品ショップでよく見かけるので存在は知っていました。でも、食べたことはない。生徒の店で「オホーツクの塩ラーメン」を購入し、自宅で作ってみました。
袋に書かれた、麺とスープを別々に仕上げる作り方は、生麺を使うときと同じ。スープは少し色が付いて薄めのしょうゆラーメンのようだが、すすると、すっきりした、まさしく塩ラーメン(そりゃそうだ)。乾麺も5分ほどゆでたが、しっかりこしがある。袋の中のメッセージには「この一品、見てくれにさほどの事はなし。されど味には、いささかの気合あり」。いえいえ「いささか」どころか、「かなり」の気合とこだわりと自信を感じる味わいでした。
さて、「つらら」とは、湧別町の「株式会社つらら」。ラーメンは同じく「みなみかわ製麺株式会社」が製造し、つららが販売しています。ともに社長を務めるのは南川保則さん(70)。塩のほかに味噌、さらに淡麗塩があり、2006年から5年間だけ営業したラーメン店「ゆうらく軒」で出していた味を再現したそうです。
会社の敷地には1946年に先々代が建てた劇場「湧楽座」があり、71年には先代が製麺業を始めました。湧楽座は70年に閉館し、製麺工場に使われていましたが、2006年に南川さんが記念館として再興。そのとき併設したのが「ゆうらく軒」でした。
実は、南川さんはゆうらく軒を出す前の1980年代半ばから、当時ブームでもあった、ご当地袋麺を開発していました。こだわったのは、生麺と変わらない味と食べ応え。ゆうらく軒を閉じたあとも試行錯誤は続き、今から5年ほど前にその味を引き継ぐ乾麺づくりにたどり着いたといいます。麺の量は袋麺の主流が70~90グラムのところを105グラムに。生麺でいうと、ゆうらく軒で出していた140グラムに相当するそうです。
いわば進化した「自分でも満足のいく袋麺」(南川さん)でしたが、実際はさほど売れなかったといいます。「価格が300円台ということもあり、売れて月20~30袋。それでもファンがいて、多少でも売れるから、ぼちぼち続けようと思っていた」のが現実でした。
そして迎えたのが2020年3月10日。「オホーツクの塩ラーメン」がテレビ番組に登場した日です。事前に番組スタッフから取材は受けていましたが、問い合わせても本当に紹介されるかどうかは不明。晩酌がてら番組を見ていたら、思ってもいなかった順位まで発表され、ご当地袋麺「波麺(ちぢれ麺)編」のナンバー1に。
「これは大変なことになった」。予感は当たり、翌日だけで13万袋、次の日にさらに1万袋増える爆発的な注文。受け付けるネットはすぐにダウンし、電話に追われた。生産は追い付かず、予約は半年先、1年先と延びる。3カ月ほどして「これではみんな倒れる。日曜もきちんと休んで出せる範囲でやろう」。それから4年。注文も落ち着いた今、テレビ番組をこう振り返ります。「頑張って良い麺ができるようになったタイミング。しかもコロナ禍の中。まさに神がかりでした」
このラーメンはその名の通り、スープにも麺にも「オホーツクの塩」が使われています。その塩は「つらら」が製造、販売しています。次回「つらら(下)塩」に続きます。
※南川さんは経営者の一方、シンガーソングライター「オホーツク太郎」の顔も持ち、幅広く活動しており、湧別町のふるさと応援大使も務めています。7月11日(木曜日)には札幌市民交流プラザでオホーツク太郎のライブがあります(午後6時開場、同6時半開演)。チケットは3500円。問い合わせは、オフィスつらら(01586-5-3933)へ。
(取材・文/ふるさと特派員 島田賢一郎)